花鶏と考査

漢字の小テストがあった。 僕は10点中7点だった。 漢字が得意な同級生の花鶏(あとり)なら、きっと満点をとっていることだろう。そう思って話しかけてみた。 「9点だった」 10点中9点ということは、1問間違えたらしい。漢字が得意な花鶏でもそういうことがあるのか。どの問題を間違えたのか聞いてみた。 「するどい、の問題。急に思い出せなくなった」 鋭いは僕は書くことができた。ちょっとした優越感を感じていると、 「尖塔の尖しか出てこなかった。これもするどいって読むけど、中学校では習わない。うーん、鋭利を思い出せていれば……」 と反省した表情をしていた。難しい漢字を知りすぎて、学校で習う漢字がわからなくなったらしい。 それにしても、するどいと読む漢字は1つだけじゃないのか。聞いてみると、 「多分いっぱいある。今は漢字辞典を持ってないからわかんないけど」 とのことだった。 放課後、帰ろうとしていると花鶏が近づいてきた。 「するどい、調べてきたよ」 図書室に行って、漢字辞典を調べてきたとのことだった。 花鶏はノートを広げて僕に見せた。 「尖と鋭は話した通り。利という字もするどいって読む。これは常用漢字だけど、常用の読みじゃない例」 学校で習う漢字にも、読み方は色々あるのか。 「銛は魚を刺すモリのことだけど、これもするどいって読む」 他には、錟という字が書かれていた。 「この字は漢検一級にすら出ない漢字」 驚いた。漢検一級といえば最も難しい漢字の試験だと思っていたが、そこにすら出ない漢字があるとは。 漢字の奥深さを感じた放課後だった。