花鶏と枉駕

ついにこの日が来た。 今日は花鶏の家に行く約束をした日だ。今日までずっと落ち着かない日々を過ごしていた。 放課後、花鶏とともに学校を出た。花鶏についていく。 しばらく歩くと花鶏が立ち止まった。そこには一軒家があった。 「ここが私の草廬。入っていいよ」 僕は家にお邪魔する。 「枉駕来臨、ありがとね」 花鶏は僕をリビングに案内した。そこには母親と思われる人が立っていた。 「おかえり花鶏。あら、本当に呼んだの?」 「勿論。お母さんがそう言ってたから」 「いやいや、お母さんは一度会ってみたいとは言ったけど、家に呼んでとまでは言ってなかったわよ」 「そうだっけ?」 家族の会話の中に関係ない自分が放り込まれたような気がして、少し気まずい。 「せっかく来てくれたから、ゆっくりしていってね。歓迎するわよ」 花鶏のお母様は飲み物を出してくれた。そして花鶏のことについて饒舌に語りだした。花鶏は恥ずかしかったのか自分の部屋に入っていった。 そして、プレゼントのことについて感謝された。僕は何もしていないけれど……。 しばらくして花鶏は部屋から出てきた。花鶏が言うには「部屋の中は秘密。この手帳と同じようにね」とのこと。 そろそろ帰ろうかと思ったところ、お母様が食事の提案をした。 「晩ごはん食べてく?遠慮しなくていいのよ。それとも、花鶏が作る?」 「作らない」 「この間お母さんに作ってくれたじゃない。友達にも作らないの?」 「時期尚早」 こうして、僕は花鶏の家を後にした。家庭を垣間見て不思議な気持ちになった。