花鶏と図書室

珍しく図書室に寄ってみた。 教室の賑やかさとは打って変わって、静かな空間である。 僕は特に探している本もないので、適当に歩く。知らない本がいっぱいある。 すると、漢字の本を見つけた。手に取って開いてみると、難しい漢字がいっぱい書かれていた。 難しい漢字が好きな同級生の花鶏は、こういう本も読むのだろうか。 しばらく本を立ち読みしてから、元に戻した。 人の気配を感じた。隣を見るとそこには花鶏が立っていた。 僕は驚いて、わっと声を出してしまった。 「しーっ」 花鶏は指を口にあててこちらを見る。そして小さな声で話す。 「君がここにいるなんて珍しいね」 花鶏は図書室によく来るのか尋ねてみると、 「たまに来るけど、漢字の本は大体読んじゃった。あとは漢字辞典くらいかな。もっと漢字の本があればいいのに」 とのことだった。すごいなあと感心した。 「大きい図書館に行けばもっと漢字の本があるかも。載籍浩瀚、汗牛充棟……」 よく見ると花鶏は手に本を持っていた。これも漢字の本だろうか。 「これ?これは料理の本」 漢字の勉強ばかりしている花鶏が料理に興味を持っているのは意外だった。 「烏に反哺の孝ありっていうからね」 どういうことだろう。 「料理は私の萱堂がいつも作ってくれるから、たまには恩返しがしたくて」 漢字に詳しい上に親孝行にも励む花鶏。僕も見習わないといけないなと思った。 せっかく図書室に来たので漢字の本を1冊借りることにした。